陥入爪治療記:その3の3〜第三次(惨事?)大戦(3)

オペ実行!

オペ実施の当日。当然、勤務先には休みと告げる。部下から手術の失敗を願うメールが来る。ほっとけ。手術は午後からなので、指示されたサンダルを購入しようと出掛ける。しかも、この週に当家のPCのハードディスクが飛んだらしく、それも購入することになる。ヲイヲイ、いいのかよ?と思いつつも買いに行く。とても、その日に手術を行うとは思えないノリである。

さて、ハードディスクとサンダルを購入し、帰宅して軽く昼食を採る。昼食は控えめに、と言われているので本当に控えめに麺類をお代わりする。そして、いよいよ出征である。眦を決して、駅に向かう。まだ暑い、9月の上旬であった。手術は午後2時半からと言うことで、2時10分には来ていて下さいとのことだったので、2時5分には病院に入った。

診療時間外である旨書いた札が下がっていたが、無視して中へ(予約客だもんね←ヲイ)。当然、待合いの患者はおらず受付に若い女性の事務員がいるのみ。手術の予定だということを告げて、診察券を渡して座って待つ。

1分も経たないうちに(は、早い)、看護士の女性から呼ばれたので、処置室へ入る。手術用の無影灯が天井に据え付けられているのを見て、これから手術なのだということを改めて認識。

まず、薬浴。自宅で貼り付けていたガーゼを剥がしてくれる。これくらいは自分でやりたいのだが、どういうわけかそう言ってもやってくれる。改めて思ったが、自宅でするときによりも明らかに色が濃い。平たい洗面器でするのと、底の深いバケツのようなものでは見え方も違うと思うんだが、それにしても濃い。そこに、足を10分ほど浸けておく。手持ちぶさたなんだが、2人いる看護士の女性も口をきこうとしないので、こちらも黙っている。あまり患者といろいろ話さない病院のようである。

おっとっと、忘れていたが、携帯電話の電源を切っておく。

しばらくすると、先生が登場。軽い挨拶を交わしただけで奥へ入っていく。目覚まし時計のような音がして、薬浴終了。足をていねいに拭いてくれる。足くらいは自分で拭くのだが、やってくれる。術前なので、拭き残しがあってはまずいのだろうということで勝手に納得。

足を拭いたら、処置用ベッドに仰向けになる。いよいよ始まるのだと思うと、胸が高まる(ヲイ)。膝の下に三角柱の枕のようなものを入れて、膝を曲げた感じで待機。すると、先生が旧式の大きなデジカメを持って登場(やっぱり来たか)。おもむろに、患部の写真を撮り始める。いいでしょう、医療データとしてこの身を捧げよう。血圧測定。高いんだよな~いやだな~なんて思っていたが、測定を終わっても何も言ってくれないので、「高いんですよね~」なんてこちらから言ってしまおうかと思ったが、結局黙ってた。

先生が手袋なんてしてきたので、すわ、いよいよか?と思ったら、

「麻酔しますね」
「ちょっと痛いですから」

なんて言って指の付け根にぐさっ!うっ、これはイタヒ。まぁ、神経叢に針を刺すんだから当然なんだが。このときやっと、

「ここだけは我慢して下さいね。」

と看護士さんの優しい声。我慢しましょう、と思ったら

「もう1回ね」

と反対側へ。うっ、これもイタヒ。何か中に入ってくる感じがダイレクトすぎて、勘弁してくれ、という感じだ。

麻酔が終わったら、指の毛を切られる。毛って不潔なんですって。手術の際には近くの毛はすべて剃られるのだが、盲腸でなくてほんとよかった、という感じだ。その後、看護士さんがいきなり足を持ち上げたので、「何?」と思ったら足に消毒薬(赤チン?)を塗りたくっている。そうだな、消毒しとかなきゃいけないもんな、と思っていたらこれが終わらない。すべての指、指の付け根、足の甲、足の裏、いたるところに塗りたくっている。

「先生ここまだです」
「そうだな」

といった感じでまんべんなく塗られる。なにげに見てみると、ほとんど血まみれと見まごうばかりだ。

「感染症怖いからね~」

と先生。

もう、足の指の感覚はなくなっていて、氷を当てて1時間ほど放置したような感じになっている。触られているのもわからない。手術部位だけ穴を空けた緑色のシーツを被せて、いよいよオペ開始という感じか。緊張が高まる。

「これ痛いですか?」
「いいえ」
「じゃ、これは?」
「いいえ」
「これは大丈夫?」
「はい」

という3回の確認を経て、突っ込んだみたいだ。何をやっているのかはわからない。時折、じょきじょきという感じや、ぶちっという感じ、ざくざくという感じがするだけで痛みもないし、音もしないし、推測材料がまったくない。この間、2人の看護士さんは少し離れたところで見ているだけである。表情も変わらない。よくある「汗」「はい」もなし。最初のざくっの直後、抗生剤入りの点滴を左の腕に刺される。

うーん、あとは眠いような感じがしてきたので目を閉じてすーすーやっていた。

なんか終わったような感じがして、看護士さんが動き始める。手術部位に包帯を巻いている。ぐるぐる巻いている。その間、先生と看護士さんは

「血があまり出ないね」
「そうですね」
「昔は………」

なんてことを言っているが、何のことやらよくわからず。聞くのも怖い感じで。

「はい、終わりです。」

の声で先生退場。え?何か言うことないの?って感じだったが、だいたい15分くらいであった。麻酔の注射ははっきり言って痛いが、その後は至って無痛である。だが、このときだけだった…。

点滴をすべて終えるまで、横になっている。そのうち、別の患者さんが来たようで隣のベッドに案内されている。点滴が終わって起き上がると、先生登場。痛みや薬に関しての説明。ひととおり済ませると、さっと隣のベッドに移っていく。忙しい先生だ。

点滴が終わり注射針を外される。また先生登場。薬だが、抗生物質と痛み止めが2種類。抗生物質は毎食後に飲むのだが、痛み止めも同じ。ただ、2種類ある方のひとつは、どうしても痛みが我慢できないときにのみ飲めということ。帰ったら、お昼ご飯のあとということでとりあえず薬を飲んで下さい、とのことだった。そのつもりだった。

待合室へ行く前に、看護士さんに質問。麻酔はどれくらいで切れるのですか、と聞くと、10分?~1時間くらい?ずいぶん幅があるんだな。待合室へ。午後の診療が始まる直前だったので、すでに患者さんがたくさん。その中を、足を引きずって空いている席に座る。入り口の近くにいた中学生くらいの女の子と、その母親と思われる人がこっちを見てひそひそ。「手術?」とかそんなキーワードが聞こえる。女の子の足を見ると、指にガーゼが。同類だね。怖がらせてゴメンネ。

すると、すでに足に痛みが。いくらなんでも早すぎでは?い、痛い。時間が経つに従い痛みが強くなるので、これは間違いなく麻酔が切れている。看護士さんの言っていた10分に相当するみたいだ。ふだんアルコールを摂取しすぎで、麻酔が効きにくい体質になっているのか?

名前を呼ばれて診療代を払う。9500円くらい。保険適用なので、こんなもんだった。「お大事に」の声を背に、K医院を出る。そのまま、下の階の薬局へ。このころは、相当痛みが強くなってきている。薬局で処方箋を渡すと、すぐに名前を呼ばれる。薬をもらい、薬代を払い、薬局を出るころには相当痛い。

日帰り手術はつらいよ。

病院と駅が近くてよかったよ…。痛いので、駅で水を買ってすぐに薬を飲もう、そう思う。そしたら、電車がちょうど来ている。どうしよう、水買って電車をもう1本待とうかしら?でも早く帰れた方がいいと思い、そのまま電車へ。電車内で家にメール。家からメールの返事。無理しないでタクシーを使えとのありがたいお言葉。しかしすでに電車なので、このまま帰ろう。この間、ますます痛みが強くなってきている。

この痛みでは、駅から家まで歩けそうにもない。そうだ、駅からタクシーを使おう。ワンメーターで済むし。なら、ワンメーターでできるだけ長い距離を走る駅を選択(せこいなぁ)、降りる。いい加減痛みに我慢できなくなってきたので、水を買い、ホームで薬を飲む。改札を出て、タクシー乗り場へ。

タクシーがなかなか来ない…。やっと来たタクシーは、運転手がおしゃべり。いきなり暑くなってきましたね~。こっちは足が痛くてそれどこではない。生返事していると、そのうち状況を察したのか口をきかなくなった。着いた~。お金を払い、足を引きずって家の中へ…。つらかった。

家に着いたら、ゆっくり休めばいいのに、馬鹿な私は午前中に購入したハードディスクの換装に取りかかっている。薬が効いてきたのか、痛みは和らいでいる。足の先にさえ刺激を与えなければいいので、足を投げ出してPCを引っ張り出し、ふたを開けて換装。その後、OSの再インストール中、ぼけっとしている。

陥入爪治療記:その3の2〜第三次(惨事?)大戦(2)

陥入爪治療記

陥入爪治療記:その3の4〜第三次(惨事?)大戦(4)

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